コンセプト③

ホームコンセプトコンセプト③

自分たちには何ができるのか?

獣医師とは、『人間以外の動物に対して、病気や怪我の診察・治療にあたる者』と定義されています。

つまり、獣医師の仕事というものは非常に多岐に渡り、自分で言うのも何ですが、覚えなければならないことの量はそれこそ莫大なものになるということです。

私が大井競馬場・増山ホースクリニックに就職したときは、競走馬の獣医師なら、馬のことは何でも知っていて、何でもできなくてはならない、と勝手に認識していました。

というのは、競馬場で行う一般的な診療はもちろんのこと、開腹手術や骨片の摘出手術など、といったこともできて初めて一人前。言い方は良くないですが、『何でもできる獣医師=偉い』と勝手に思い込んでいたのです。

ですが、働き始めて数年経ち、ちょっと違うかもしれない、と思い始めました。競馬場で働いていると、診療する馬たちは、ほぼほぼ健康な子たちばかりなのです。なので、競馬場内で手術をしたり、といったことはまずありませんでした。

そんな中で、もし自分が手術の知識や技術を身に付けて、それを再現する機会はあるのだろうか?と思いました。そこで中途半端な知識や技術を身に付けて、中途半端な医療を提供することが、果たして馬や厩舎関係者の皆さんのためになるのだろうか?ということです。

それなら、そこはもう変なプライドは持たずに、手術の知識や技術に長けた先生たちにお任せした方が、馬や厩舎関係者の皆さんたちのためになるのではないかと考えたのです。

できないから他の先生に任せる、ということは場合によっては無責任だと思われるかもしれません。しかし、私は中途半端な知識と技術で中途半端な医療を提供することの方がもっと無責任ではないかと思います。

人間の医師たちでも、内科の先生が執刀したりすることはありませんし、お産に立ち会ったりすることもありません。

私は、その代わりといっては何ですが、競馬場でできる診療に関しては全てやり切るようにしなければならない、と考えました。自分たちは自分たちの場所でできることを極めるしかない、ということです。

アニメ『鬼滅の刃』に出て来る慈悟郎は、弟子の善逸に、『一つのことを極め抜け』と言っていました。状況は違えど、まさにその通りかと思いました。話はちょっと逸れましたが(笑)。

ところで、私が競馬場での診療で特に大切なのは、

1.疝痛治療
2.跛行診断
3.抗生物質の選択

の3つが三本柱だと思っています。もちろん、レースへ向かっての診察や治療は抜きにしてのことです。

まだまだこれらも完璧に遂行できているとは思ってはいませんので、より精度を上げて、競走馬たちや厩舎関係者の皆さんのお役に立てるよう、日々精進して行かなければならないと思っております。

2021.8
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